「mitsuの“挑戦”のストーリーを一緒に楽しんでほしい」
かつてはν[NEU]のヴォーカルとして人気を博し、現在はソロアーティストとして活動中のmitsuが主催する、3マンライブ『みつどもえ』。4月5日のTSUTAYA O-WESTからスタートした3本勝負の2日目が、4月26日TSUTAYA O-WESTにて開催された。2回戦の対戦相手は、ユナイトとGOTCHAROCKA。元レーベルメイトや、長いバンド歴の中で互いに切磋琢磨してきた同志達との対バンということで、SHIN(ex.ViViD)・ダウトと迎えた初日同様、手加減一切なしのぶつかり合いが繰り広げられた。
MCでmitsuも言っていたが、『みつどもえ』の楽屋はとにかく騒がしい。とくに今回の初日・2日目は、ある種、同窓会のような雰囲気が漂う顔ぶれということもあり、自分の出番が終わったバンドマンが2階席から顔を覗かせたり、終演後に興奮冷めやらぬ様子で語り合っていたり……アーティストもスタッフも、とびきり良い表情をしているのが印象的だった。もちろん、その中央にいるのは、誰よりも熱い男、mitsu。ソロアーティストでありながら「自分1人ではここまで辿り着けなかった」と素直に語り、その上で「あらゆる垣根を越えて、アーティスト同士が近い距離で面白いものを生み出していけたら」と願う彼だからこそ、そのまっすぐな想いに賛同したバンド、サポートメンバー、スタッフが集結したのだろう。出演者1人1人が、心から楽しみながら音楽を奏でる――。そんな血の通った競演は、2015年にソロとして再始動して以降、mitsuが約4年をかけて手に入れた大きな財産だ。そして、アーティスト同士の一体感をより色濃く観客に届けるための導入として、O.Aでは、「初めてmitsuの音楽に触れる人にも気軽に聴いてほしい」という想いを込めて、Every Little Thingの名曲『Time goes by』をアコースティックバージョンでカヴァー。短い時間ながらも、泰斗(Key)&柴由佳子(Vn)による洗練された演奏とmitsuの情感豊かな歌声がすぐさま観客の心を鷲掴みにし、場内の空気を変えていった。
ヴォーカル結がmitsuの元レーベルメイトという縁でトップバッターを飾ったのは、ユナイト。ゆったりとした雰囲気で登場したかと思いきや、結の「声出していこうか!」の一言で1曲目『small world order』へと突入すれば、テンポ良く繰り返されるジャンプに合わせて、色とりどりのブレスやリングが輝いた。その後は、タオルを回しながらひとつになった『Cocky-discuS』や、見事な暴れっぷりを見せた『---キリトリセン---』など、バラエティーに富んだ全7曲を披露。ラストはファンタジックな世界観の『ビリブオアノ』を通して、ハッピーオーラを振りまいた。
一方、GOTCHAROCKAは、MCでmitsuが「JUNさんから恋人じみたボイスメッセージが届いた(笑)」と暴露したように、ライブ前からその親密度が窺える関係性。それだけに、1曲目『Baccarat』のドラマティックな歌い出しで観客の視線を釘付けにしつつも、ライブが進むにつれて、パンチの効いた歌詞がクセになる『恐想ロワイヤル』や<GR!GR!>コールが充満した『Hydrag』といった定番ライブ曲で暴れ倒す展開が待ち受けていた。楽曲の激しさに反して、ますます輝きを放つ笑顔と大きくなる掛け声。その熱気を全身で感じながら『Ash』を届けると、3人は汗ダクでステージを後にした。
2バンドが温めてくれたステージに身を委ね、トリを務めるのは、主催者mitsu。『みつどもえ』初日は、新曲『じゃないか』をダンスパフォーマンス込みで初披露し、ポテンシャルの高さを見せつけたが、なんと2日目はオープニングから、ダンサー2人(RYO、TAKA-KI)を含む、総勢8名のスペシャルチーム<夢時(Gt)、KOUICHI(Gt)、Sato(Ba)、Aki(Dr)、泰斗(Key)、柴由佳子(Vn)>を従えてスタンバイしていた。幕が開くや否や、色気たっぷりのイントロで助走をつけると、「いこうかー!?」の声を合図に『MIDNIGHT LOVER』でライブスタート。続く『It’s So Easy』では、Akiのドラムに合わせて、泰斗→夢時→柴→KOUICHI→Satoと豪華メンバーがソロを繋ぐ場面もあり、冒頭からチームワークの良さが光るプレイで視覚と聴覚を刺激した。
『エトリア』や『キンモクセイは君と』など、曲の世界観に浸れるドラマティックなラブソングが印象的だった初日に対して、今回は観客との関係性を連想させる、等身大の歌詞を綴った楽曲が多め。もともと飾らないキャラクターではあるが、より心を曝け出して、のびのびとステージに立っているのが感じられた。ミラーボールが照らす中、観客との距離をゆっくり縮めるように歌った『スローペース』。歌詞を全身で表現する姿が胸を打つ『言いたいことも言えずに』など、mitsuからのラブレターともとれる楽曲が立て続けに披露されると、そのお返しに届けられた大合唱が、場内をさらに幸せな空間へと塗り替えていく。
ちなみに、『It’s So Easy』と『スローペース』、7曲目に披露された『Into DEEP』は、1st Mini Album『DEEP』に収録されている、いわゆる“初期の楽曲”。mitsuに関わる全ての作曲を手がけ、始動当初から活動を支えてきたKOUICHIが「『DEEP』の制作自体が、mitsuくんを知るためのプロセスだった」と話すように、ソロアーティストmitsuの基盤となっている3曲でもある。そんな始動から約4年、試行錯誤を繰り返していくうちに、ソロプロジェクトは、いつしかバンドという枠を越えた大所帯に……。それでも、「今は軸ができたというか、mitsuくんが今何をしたいのかが明確に見えているから、頼もしいです」とKOUICHIは笑顔で語る。その頼もしさは、ライブ中、「ねえねえ、最高じゃない!? みんなに楽しいかどうか聞く必要ない。俺、今、超楽しいもん!」と自然に溢れ出た言葉からも十分に伝わってきた。自信満々でいられるのは、最高の仲間と出会い、今進んでいる道が正しいと信じられている証し。そして、葛藤しながら、仲間達のアドバイスを柔軟に吸収しながら“自分らしいアーティスト像”を追い求めてきた結果、辿りついた1つの形が最新曲『じゃないか』。「楽しむ準備はできてるかい!?」と投げかけると、再びダンサーを呼び込み、キュートにダンスを踊った。完全初披露だった初日とは違い、観客も一緒になって楽しそうに踊る姿が微笑ましい。さらに、夢時とSatoが演奏しながらステップを踏むという、好奇心旺盛なmitsuらしい演出も加わり、楽曲をより一層華やかに彩っていた。
とはいえ、『Crazy Crazy』『Into DEEP』といったアグレッシブなロックチューンで攻めの姿勢を示すのも、やはりmitsuらしさ。フロアに身を乗り出しながら挑発し続けるmitsuと、躍動感みなぎるステージングで興奮を煽っていく楽器陣、ステージを飲み込む勢いで充満した観客の叫びが熱く交差すると、まさに『みつどもえ』という名にふさわしい光景が広がっていた。
最後に1曲を残したところで、「今、協力してくれている人達にいつか返すためにも、夢に向かってなりふり構わず挑戦し続ける」と力強く宣言したmitsuは、改めて「mitsuの“挑戦”のストーリーを一緒に楽しんでほしい」と観客に呼びかけた。バンド時代の彼を知っている人からすると、“優等生”のイメージがまだ根付いているのかもしれない。だが、かっこいい仮面を脱ぎ捨て、たくさんの人の夢を背負ってがむしゃらに突き進む今の彼もまた、美しい。ラストを告げるのは、そんな夢を追う生き様を投影した『Live Your Life』。この日この場所だからこそ生まれた青春の輝きを胸に焼き付けるように、観客1人1人に想いを手渡しするかのように前のめりで歌い上げると、『みつどもえ』2日目は幕を降ろしたのだった。
Text:斉藤碧
Photo:ayak