11月11日はmitsuの誕生日。 今年は自身の誕生日当日にライブが開催された。
今回のライブタイトル「Re:BEAST」は、直接的にいうと「再び野獣になる」ということ。そこには「未来を創るために破壊する」という想いが込められている。誕生日ということもあり「生まれ変わる」意味も込めて「Re:」が冠された。
mitsuはライブ前のインタビューで「音楽を楽しみたい! 楽しむことだけを考えた一点突破なライブにしたい。」と話していた。今年の「みつの日」以来のREXのステージ、しかもバンドセッティングは1年10ヶ月ぶり。この1年10ヶ月は、配信ライブを始めたことや、歌唱表現の大きな変換点となったライブ「DEEP LAYER」など、mitsuにとってさまざまな変化が起きた期間だ。mitsu自身も「大きな変化があったから、ライブハウスでやる普通のライブってどんな感じだったかな? という感じ。今やるライブは、過去にやっていたライブと全然違うものになっていると思う。特にバンドセッティングは本当に久しぶりだから、もはや“新しいもの”という感覚。このメンバーだからこそできる音楽、その瞬間でないと生まれない音楽を楽しんでもらいたいし、俺も楽しみ!」と話していた。
セットリストは全16曲というボリューム。mitsuとギター:夢時、ベース:燿、ドラム:風弥の4人編成から始まり、キーボード:藤原 泰斗、バイオリン:柴 由佳子(サポートメンバーの敬称略、以下同様)による「親密」シリーズの編成、そして全員がステージに上がる6人編成で構成される。セットリストを考えるとき、mitsuは「今回の編成が最も活きるように、同期なしで演奏できる曲にした。同期なしでかっこいい曲。それに、“今まで通り”を壊す並びを意識した。フロアを巻き込んで盛り上げていくライブというよりは、音楽と向き合って、音楽によって熱が生まれていくセトリにしたいと思った。」と語る。
サポート陣もこの想いを共有していて、藤原泰斗は「この日のためにアレンジを作り込むというよりも、その場の空気感とかセッションみたいなノリを大切にしたいと思っています。バンドセッティングでの演奏が久しぶりなので、参加する全曲が楽しみ!」風弥は「mitsuのライブは毎回アレンジが変わるし、その日のテンション感が明確に反映されて、その時じゃないと生まれない何かが生まれるから楽しい。そこに便乗できるのが最高! 楽器陣のことを信頼しているのが伝わるから、その信頼に応えるという楽しさもある。リハでこまかく話し合ったこともあるけど、それすらも今日の空気感次第で良い方向に変化するだろうから、その変化を楽しみたい。」と話してくれた。
幕が上がると同時にトップギアで演奏される「For Myself」でライブが始まった。バンドセッティングでロックっぽさ全開の演奏に、観客は手を振り上げ応えていた。スタートの勢いは衰えることなく「Live Your Life」「It's So Easy」へと続く。mitsuの歌唱も力強く、観客を煽るように挑発的。短く挟まれたMCでは「何もかも変わったから、振りを忘れててもいいよ! 今日からまた新しく、イチから創っていこう!」と、自由に音楽を楽しんでほしいという気持ちを伝えた。「砂の城」「遥か」と続き、5曲を演奏した4人編成のパートでは、骨太なロックを聴かせてくれた。
優しくも寂しげなピアノから始まる「蛍」から、「親密」の3人編成に。続く「スローペース」の2曲では、歌唱表現の幅が広がっていることを感じさせた。過去のインタビューで、体力づくりに励むことで歌唱力が上がったと話しているmitsuだが、単純に声量が上がったとか音程が安定したなどというだけではなく、表現力までもレベルアップしている。さらに、歌唱力にとどまらず身体表現も向上していることが感じられる。これは、配信ライブで培ってきた経験のすべてが結実したものだろう。「親密」の3人が積み重ねてきたものが存分に発揮されていた。
「親密」編成のMCでは「みんな楽しんでくれているって信じているけど、俺がすごい楽しんでいるので、ありがとう! ライブハウスの空気感、雰囲気が最高。みんなも楽しんでいってね!」と語りかける。ここで次の曲のために呼び込まれた風弥は「いつものかざみつと違うね。今日、かっこいい! いつものテンションとちょっと違う(笑) 俺もすごい楽しんでます。」と話す。
「親密」の3人に風弥を加えた4人で演奏する「Naked」は、アコースティックとドラムという初めての編成。ドラムが加わった「Naked」は力強さが増し、よりいっそうエモーショナルに響く。マイクなしで歌う場面もあり、mitsuの声量に驚かされた。
アコースティックパートの終わりにMCで「俺たちみんな上手くなったでしょ。これまで、普通ではいられなかったから、音楽の力を信じて頑張ってきました。今日のライブはこれまでのことが報われた時間です。“やっぱりかっこいい! 前よりかっこいい!”って思ってもらえたらうれしい。純度100%の俺たちの音を受け取って欲しい。」と話し、サポートメンバー全員がステージ上に揃う。フルメンバーで「キンモクセイは君と」「鼓動」を演奏。音色に広がりが増し、メンバー同士の息もぴったり合っている。演奏を楽しむ気持ちがそうさせているのだろう。
mitsuも全員で奏でる音楽を存分に楽しんでいるようで、MCで「ライブ1本1本を大事にするようになったけど、改めて強く思う。REXのステージもすごく気持ちいい。最高! ライブって特別なんだね。今日は最高の誕生日!楽しい時間を続けて、繋いでいって、またみんなで楽しみたい。」と話す。
ここからライブは最終パートへ。mitsuも「過去のライブ史上、一番激しいセトリ」と言っていたとおり、ラストまで駆け抜けるように演奏された。疾走感が冴える「エトリア」、ジャズの雰囲気をまといゴージャスに奏でられる「MIDNIGHT LOVER」、ラテンの空気感に満ち、燃え上がるように情熱的な「蜃気楼」。「Crazy Crazy」でさらにボルテージを上げ、mitsu もサポート陣もテンションは最高潮。攻撃的でパワフルな「Into DEEP」まで息つく間もなく駆け抜けた。
ラスト曲前のMCで「いつも偉そうなこと言ってたのに何もできなくて、情けない時間が多かった。でも、今日見てくれたみんなには伝わってると思う。俺、大丈夫そうでしょ? コロナ禍を言い訳にして、俺がビビってたんだなと思いました。今は、やっぱり戦わなきゃダメだなって思っています。その意思を表明するためのライブでした。聴くだけでグッとくるような、刺さりまくるライブを続けていこうと思います。これからもよろしく!」と、率直な想いを伝えるmitsu。最後の曲「ラストヒーロー」には、mitsuの決意が込められていた。
今年で33歳になったmitsu。悩み、落ち込み、手探りで進んできた期間が続いていたが、それは少しづつ強さを身につけている期間でもあった。この日のライブでは、迷いがない目で、力強い声で、全力の歌唱で、過去の自分を壊し未来へと進む野獣の姿を見せてくれた。
バンドセッティングで、ライブハウスで歌うmitsuはやっぱり格好良い。安直な言葉だが、それ以外に適した言葉が浮かばない。ステージが似合う、バンドの音が似合う、というだけではない「何か」がライブで生まれるのだ。しかもその「何か」はライブごとに違うものが生まれる。「Re:BEAST」で見せてくれたのは、1年半続けてきた配信ライブでの成長であり、mitsuがいまやりたいことの全部であり、mitsuが進む先を示す一点の光だった。
この日のライブは、ステージ上の全員がこの瞬間にしか生まれ得ないセッションを心から楽しんでいることが強く伝わってきた。曲そのものの格好良さもさることながら、数々のアドリブもこのライブでしか聴くことができない素晴らしいものだった。
会場の渋谷REXも、今年4月末ごろにLEDスクリーンが設置され、以前よりパワーアップ。照明演出が豪華になり、ライブをよりいっそうエモーショナルにしてくれる。来年開催が発表された都内ツアーの最終日(みつの日)は渋谷REXが会場だ。パワーアップした渋谷REXをその目で確かめてほしい。
【SET LIST】
1.For Myself
2.Live Your Life
3.It's So Easy
4.砂の城
5.遥か
6.蛍
7.スローペース
8.Naked
9.キンモクセイは君と
10.鼓動
11.エトリア
12.MIDNIGHT LOVER
13. 蜃気楼
14.Crazy Crazy
15.Into DEEP
16.ラストヒーロー
Text:板垣可奈子
Photo:Aki(Lc5)
2021年11月11日(木)
mitsu Birthday Oneman Live
「Re:BEAST」
【出演】
mitsu
【サポートメンバー】
Guitar:夢時(eStrial / HOLLOWGRAM)
Bass:燿(摩天楼オペラ)
Drum:風弥~Kazami~(DaizyStripper)
Keyboard:藤原 泰斗
Violin:柴 由佳子(チーナ)
【会場】
渋谷REX
https://ruido.org/rex/